宇宙放射線の影響

AMD は、業界で最も信頼性に優れた多用途に対応できる宇宙アプリケーション向けプログラマブル製品を提供しています。すべてのテスト方法、結果、判定は、顧客企業と科学界が連携し、業界および政府が策定した規格にしたがって実施しています。XRTC (Xilinx Radiation Test Consortium) の多大な努力の結果、AMD の宇宙グレード FPGA は、業界で最も厳しい照射試験に合格した SEE 特性評価済みのデバイスです。

AMD の宇宙グレード製品は、宇宙放射線環境で利用することを目的として構築、試験、特性評価されて、その性能を明記しています。宇宙放射線による影響には次のものがありますが、これらのみに限定されるわけではありません。

すべての放射線耐性 (RT) 製品および耐放射線性設計 (RHBD) 製品の適合性を確実なものとするために、ウェハー製造ロットを包括的な TID 保証プロセスでテストし、その結果をデバイス データの一部として公開しています。スイッチ特性データシート (PDF) に記載されているすべての AC、DC、タイミング、およびパラメーターの詳細は、デバイス データシートに記載されている最大 TID で保証されています。すべての宇宙グレード デバイスは、総線量蓄積の前、途中、後において、すべてのデータシート パラメーターを満たしているため、製品寿命の終末期における TID により、パフォーマンス レベルが低下することを考慮する必要はありません。

すべての AMD 宇宙グレード製品の TID は、「Test Method 1019」(Mil-Std-883) に基づいて評価されています。具体的には、最新バージョン (TM 1019 .7) が適用されており、詳細は Defense Logistics Agency からダウンロードできます。

Mil Prf 38535 Test Method 1019.7 では、50 から 300rad (Si)/sec の線量率でコバルト60 照射による TID 試験が必要です。従来ファミリ製品では、ローエンド仕様の TN1019 で TID 試験を実施していましたが、Virtex-5QV は高い TID 耐性を備えているため、米国国防補給局 (DLA) が認定するハイエンド仕様 (300 rad(Si)/sec) でコバルト60 照射を実施しました。TM1019.7 によるロット認定では、量産試験プログラムで22 ピースのサンプルに照射を与えて試験を実施し、データシートの仕様に基づいた製品の機能、速度、タイミング、駆動能力を保証します。TID 試験の手順や結果の詳細は、ホワイトペーパー『Total Ionizing Dose Tolerance of Xilinx FPGAs』を参照してください。

電離放射線は、半導体デバイスに好ましくない影響を与える可能性があります。エネルギー陽子、ニュートロン、重イオン、およびアルファ粒子は、トランジスタの重要な部分を攻撃するため、次に示すさまざまな不具合、つまりシングル イベント効果 (SEE) を引き起こします。

  • シングル イベント アップセット (SEU)
  • シングル イベント トランジェント (SET)
  • シングル イベント ファンクショナル インタラプト (SEFI)

放射線影響の特徴

放射線影響に対する過敏性は、トランジスタ経常やセル レイアウトなど、さまざまな要素によって異なります。SRAM などの一部の CMOS テクノロジは、SEE を引き起こしやすい性質があります。AMD デバイスで使用される CMOS コンフィギュレーション ラッチ デザインを含むその他のテクノロジーは、比較的 SEE に対して耐性があります。一方、Virtex-5QV で使用される RHBD (radiation hardened by design) テクノロジは、シングル イベント効果の影響をほとんど受けません。特定デバイスの過敏性を理解するためには、広範囲にわたる放射線試験を実施する必要があります。XRTC (Xilinx Radiation Test Consortium) と協力して、全米の粒子加速器ですべての FPGA と PROM をテストします。テスト結果は、XRTC の専門家によって解析および報告されます。

Xilinx Radiation Test Consortium

Xilinx Radiation Test Consortium (XRTC) は、2002 年に航空宇宙アプリケーション向けのリコンフィギャラブル FPGA を評価する機関として、AMD とジェット推進研究所 (JLP) によって設立されました。XRTC は、業界、政界、学界から優秀な専門家を集め、リコンフィギャラブル FPGA への放射線影響やその緩和テクニックをテストおよび評価します。

XRTC テストの報告書一覧は、JPL ウェブサイトで AMD FPGA への放射線影響に関する報告書をご覧ください。

XRTC の目標:

  • リコンフィギャラブル FPGA への放射線影響を軽減するテクニックにおいて自由で公平なテストおよび特性評価を提供する。
  • リコンフィギャラブル FPGA のテストにおいて企業の連携と協力を促す。
  • テスト結果および出版物の閲覧を可能にし、社会の認識を高める。

放射線試験

XRTC は、全米の施設で行った試験に基づいて、AMD の FPGA やコンフィギュレーション PROM への放射線影響を次の項目に対して特性評価します。

  • ラッチアップ
  • スタティック シングル イベント アップセット (SEU)
  • ダイナミック シングル イベント アップセット (SEU)
  • シングル イベント ファンクショナル インタラプト (SEFI)

軽減テクニックの試験

XRTC は、再構成可能な FPGA やコンフィギュレーション PROM への放射線影響の特性評価を実施するほかに、次のような放射線影響の軽減テクニックについても評価します。

  • コンフィギュレーション エラーの検出および訂正
  • トリプル モジュール冗長 (TMR)

即時線量/線量率の影響

政府機関、防衛関連企業、国立研究施設と連携して、AMD の航空宇宙および防衛アプリケーション向け高信頼性製品がテストされ、即時線量 (非自然放射線) 環境で性能要件を満たすプログラム能力が認められました。これらの報告書は、ウェブサイトに掲載されていないため、最寄りの販売代理店から入手してください。

ニュートロン シングル イベント アップセット (NSEU)

大気中性子によるアップセットは、宇宙放射線影響として考えられていないため、AMD の宇宙グレード デバイスは NSEU の特性評価を実施しておりませんが、その他すべての AMD 製品、つまり地球大気環境で使用することを目的とした製品は NSEU の特性評価を実施しております。すべての製品における既知の放射線感受性については、UG116: 『AMD デバイス信頼性レポート』 (PDF) をご覧ください。詳細は、WP402: 『FPGA、ASIC、プロセッサにおけるシングル イベント効果についての考察』 (PDF) をご覧ください。