システム オン モジュール (SOM): 使用方法と役割

SOM とは何か ?

システム オン モジュール (SOM) とは、プロセッサ コア、通信インターフェイス、メモリ ブロックなど、エンベデッド処理システムの主なコンポーネントを単一ボードに搭載した、量産対応可能なプリント回路基板 (PCB) です。このようにモジュール化された SOM は、ロボットやセキュリティ カメラなどのエンド システムに最適です。

System-on-module SOM showing image size in comparison to a credit card being used in a smart security camera

SOM のコンセプトは、ブレード サーバーから派生しています。これらの Thin サーバーは、ストレージ スペースの節約と消費電力の最小化を目的として作られました。ブレード サーバーの無駄のない設計という考え方が SOM アーキテクチャの実現に大きく影響しています。目的の機能に必要なコンポーネントだけを可能な限り小さなパッケージに収め、幅広い用途に対応できる柔軟性を備えているのが特徴です。

System-on-module SOM on carrier card showing connected starter kit components with SD card and camera

SOM は、システム オン チップ (SoC) とは異なります。SoC とは、その名のとおりコンピューターの主要コンポーネントを単一チップに統合したものです。SOM には SoC を搭載することもありますが、ボード ベースであるため、コンポーネントを追加するスペースがあります。

SOM を用いたスマート セキュリティ カメラ機能と顔認識
People walking through crosswalk showing AI security monitoring using SOMs
Defect Detection on fruit mold on farms using SOMs
なぜ SOM を使用するのか ?

SOM は、開発者にとって不可能なことを可能にし、製品化までの時間を短縮し、コストを抑えることができます。エンベデッド システムを構築するには、カスタム ボードを設計して製造する必要があり、通常は非常に時間がかかります。SOM は、デザインを実現するために必要な手順を合理化します。ユーザーの要件に合った SOM を選択してエンド システムに統合するだけで、すぐに運用できます。量産に対応できる上に、デザインがモジュール化されているため、製品ライフサイクルの管理が容易になり、BOM コストを削減できます。

ソフトウェア、ハードウェア、さらには AI 開発に至るまで、SOM には注目すべき利点が多数あります。

  • ソフトウェア開発者は、SOM を利用することでローカルでリアルタイム データ処理が可能なエッジ コンピューティングを実現できます。SOM は、ハードウェアの専門的な知識を必要としない、シンプルで直感的な設計環境を提供します。ビジョン アプリケーションのソフトウェア開発者は、SOM で実現できる柔軟かつ再構成可能なセンサー機能に注目するでしょう。その他にも、SOM はビルトイン ドライバーや開発期間の短縮に役立つさまざまなソフトウェアを提供します。
  • ハードウェア開発者は、できるだけ早く製品を完成させ、限られたリソースを重要度の高いタスクに割り当てる必要があります。SOM では、PCB の設計や統合などの複雑な作業を省略でき、FPGA (フィールド プログラマブル ゲート アレイ) の優れた性能と柔軟性を享受できます。これにより、低コストですばやくプロジェクトを完了させることができるのです。
  • AI 開発者は、ハードウェアの専門知識を習得する必要のない、高効率かつ高性能なシステムを必要としています。SoC モジュール プロバイダーが提供するビルド済みアプリケーションを利用することで、システムに必要な演算性能を備えることができる上に、AI モデルを簡単に交換できる柔軟性も備えることができます。

SOM は世界中のシステムに採用されています。ここでは、そのアプリケーションの一部を紹介します。

Smart Camera in train station for security monitoring
セキュリティ カメラ

最先端のセキュリティ カメラ システムにはビデオ分析機能が搭載されています。これを実現するのが SOM です。ビデオ分析を搭載したセキュリティ カメラは、認識した映像を機械学習で分類および理解し、正確な情報をリアルタイムに提供します。これは、エッジ コンピューティングを利用し、カメラやその他のデバイスがローカルで情報を分析する機能を備えていなければ実現しません。

Machine Vision example with defect detection overlay with smart vision cameras
マシン ビジョン

現代のビジネスでは、在庫検査、署名認識、不良検出など、あらゆる場面でマシン ビジョンの存在が不可欠です。マシン ビジョンには、その場でデータを分析したり、センサー機能を再構成できるエンベデッド システムが必要です。SOM では、コストを抑えながらマシン ビジョンを最大限に活用できるシステムを構築できます。

Smart City visual graphic of light beams ascending through city skyline at sunset
スマート シティ

スマート シティでは、あらゆる場所にセンサーを設置して情報を収集し、機能的で活気ある地域を維持するために必要なインサイトを提供します。これらのセンサーには SOM が採用されており、管理者が公共施設や交通機関などのあらゆる情報を見逃すことなく把握するのに役立っています。

Smart City visual graphic of light beams ascending through city skyline at sunset
モーター制御

電気モーターは、公共交通機関、風力タービンなどの発電システム、工場の自動化や物流用のロボット、医療機器、農業や物流用の航空システムなど、多岐にわたる分野で広く使用されています。SOM を使用することで、これらのアプリケーションをすばやく構築でき、新しいペリフェラルを追加する際に最新の規格に適応できる柔軟性を備えることができます。開発者はニーズに応じた電力と性能要件を満たすようにエンド システムを調整できます。

アダプティブ コンピューティングによる電動駆動制御と効率性の向上 (eBook)
アダプティブ コンピューティングによる電動駆動制御と効率性の向上 (eBook)

AMD の Kria™ アダプティブ システム オン モジュール (SOM) デバイスは、電動駆動制御に大きく貢献しています。これらのデバイスを使用することで、パフォーマンスの最適化、モーター駆動の効率化、消費電力削減、ノイズ軽減、振動抑制、さらには潜在的な故障を事前に検出することが可能になります。詳細は、eBook をダウンロードしてご覧ください。

アダプティブ コンピューティングを使用して AI 搭載のエッジ ソリューションを加速
アダプティブ コンピューティングを使用して AI 搭載のエッジ ソリューションを加速

適応型 SOM が次世代エッジ アプリケーションに最適な理由とその利用方法について説明しています。スマート ビジョン プロバイダーが、この適応型 SOM を利用することでのみ実現できる性能、柔軟性、および迅速な開発のメリットについても解説しています。

ロボティクス分野におけるアダプティブ コンピューティング
ロボティクス分野におけるアダプティブ コンピューティング

ロボットの需要は急速に高まっています。人間と一緒に働くことができる安心安全なロボットを作ることは簡単ではありません。これらを連携させるには、より高度な技術が必要です。また機械学習や人工知能の導入によって、さらに高い処理能力が求められるようになり複合的な課題に対応しなければなりません。

ロボット開発者たちは、拡張性のある適応型プラットフォーム上にセーフティ/セキュリティ機能があらかじめ統合され、低レイテンシ、確定性、多軸制御をサポートするアダプティブ コンピューティング プラットフォームに注目し始めています。詳細は eBook をご覧ください。

スターター キット

Kria スターター キット KV260 SOM (システム オン モジュール) スターター キット

Kria KV260 ビジョン AI スターター キット

KV260 ビジョン AI スターター キットは、AI 開発者やエンベデッド ソフトウェア/ハードウェア開発者向けのすぐに利用可能な開発プラットフォームです。ビジョン AI アプリケーション向けに設計された KV260 を利用することで、K26 SOM ベースの独自の量産向けソリューションを最短期間で開発できます。

Kria スターター キット KV260 SOM (システム オン モジュール) スターター キット

Kria KR260 ロボティクス スターター キット

KR260 ロボティクス スターター キットは、高性能な産業用インターフェイスを統合し、ROS 2 をネイティブ サポートしています。ロボティクスおよび産業機器アプリケーション向けの KR260 を利用することで、K26 SOM ベースの量産対応の独自ソリューションを最短で実現できます。

Kria スターター キット KV260 SOM (システム オン モジュール) スターター キット

Kria KD240 ドライブ スターター キット

KD240 ドライブ スターター キットは、モーター制御や DSP アプリケーション向けのすぐに利用可能な開発プラットフォームです。FPGA の専門知識がないエンベデッド ソフトウェア開発者でも、アクセラレーション アプリケーションを適用し、Python、MATLAB® Simulink® 環境などの複数の開発フローを活用して簡単に設計を始めることができます。

量産対応 SOM

Kria スターター キット KV260 SOM (システム オン モジュール) スターター キット

Kria K24 SOM

低消費電力、スモール フォーム ファクター、コストを重視する産業用アプリケーション向けの SOM であり、省電力 DSP アプリケーションに最適です。コマーシャルおよびインダストリアル温度範囲をサポートしています。

Kria スターター キット KV260 SOM (システム オン モジュール) スターター キット

Kria K26 SOM

ワットあたりの性能が高く、低レイテンシが求められるビジョン AI やロボティクス アプリケーションに最適なミッドレンジ SOM であり、さまざまなセンサーを接続する適応性と、ハードウェアとソフトウェアをカスタマイズできる柔軟性を提供します。コマーシャルおよびインダストリアル温度範囲をサポートしています。